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月刊コラム

2013年8月 タクシーサービス向上法案

 タクシーサービス向上法案が秋の臨時国会に提出されることになりました。自民、公明、民主の3党がタクシーの台数制限を事実上義務づける法案の内容についてこのほど合意しました。悪化が目立つタクシー運転手の待遇改善が法案の目的です。

 現在のタクシー業界は規制緩和によって過当競争状態にあるとされています。実際、日中の街中には空車のタクシーが目立ち、駅構内には順番待ちのタクシーがあふれています。需要に対して供給が過剰気味で、働く運転手の賃金も下がっています。

 タクシーは商店のように立地による制約がなく、さらに、他の会社のタクシーと差別化しにくい業種のため、無制限に車両を増やすと過当競争につながりやすいと言われています。加えてタクシー運転手は歩合給制で、これも運転手の待遇悪化の原因になっています。乗客がいなくて運賃が上がらないと、タクシー運転手の賃金にしわ寄せが行くシステムで、運転手の年間所得は2001年度より43万円下がって平均291万円だそうです。

 タクシー運転手の低賃金は、安全運行やサービスに悪影響を及ぼす心配があります。少しでも稼ぐためにスピードを出しがちになるでしょうし、駅で客待ちのタクシーに近くまで乗って、露骨にいやな顔をされた経験をお持ちの方も多いと思います。タクシーの安全運行や接客態度の改善に資するためにも、運転手の待遇改善が必須です。

 タクシーは小泉政権で行われた規制緩和の一環として施行された02年施行の改正道路運送法で原則自由化となり、01年度に約20万8000台だった車両が一挙に22万2500台まで増えました。ところが、競争が激化してタクシー運転手の待遇が悪化してきたところから、政府は09年にタクシー適正化・活性化法を成立させ、都市部で減車などを促してきました。

 ただ、一律に減車を各企業に割り振ると、独禁法で禁止されているカルテルにあたる恐れがあることから、同法では自主的な努力を促すにとどまり、さらに協力しないタクシー業者への強制措置もありませんでした。このため、タクシー業界に新規参入しようという業者や、増車を計画する会社との摩擦が相次ぎ、今年6月には増車申請を却下した国の処分は違法だとして都内の会社が処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は国の却下処分を取り消しました。

 これらの状況を踏まえて立案された今回のタクシーサービス向上法案では、国が指定する特定地域の協議会やタクシー事業者らに減車や営業時間の制限などの計画を国土交通相に提出するよう義務づけ、この計画に基づくタクシー車両削減は独禁法の適用外とすることと定めています。特定地域の協議会に不参加の事業者に対しても、国が地域の計画に沿うよう勧告・命令でき、従わない場合には営業停止や許可取り消しの処分規定も盛り込まれました。

 また、現在は許可制の新規参入や増車を期限付きで禁止し、過度の運賃値下げ競争を防ぐために、特定地域ごとに定められた運賃の範囲内で料金を決めるシステムも導入されています。

 タクシーの自由化は小泉政権下での規制緩和政策の一つの目玉でした。「規制の枠を取り外して自由に競争させれば、企業活動はより活発化する」との趣旨で行われた規制緩和でしたが、思うような効果が上がらず、運転手の待遇悪化という弊害も目立ってきたところから、タクシー自由化に限ってはこれを見直すことになりました。

 この法案が成立すると、タクシー料金は一定料金より下がらなくなります。一方でタクシー運転手の待遇改善が実現しなければ、利用者から批判を浴びることにもなります。生き残りに懸命なタクシーの小規模業者からは、この法案をサービス競争に歯止めをかけてタクシー大企業を保護する法案だと指摘する声もあります。法案の趣旨を的確に実現するためにも、運転手の待遇改善の実現とともに、業界全体で一層のサービス向上に努める必要があります。

 

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