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月刊コラム

2016年10月 電通の過労自殺

 大手広告代理店・電通の女子社員が寮から身を投げて自殺、労働基準監督署は過労による自殺として労災認定しました。なんとも痛ましい出来事ですが、これを単に一企業の出来事として片づけてはなりません。会社への滅私奉公を強いる日本の旧来の雇用形態が、依然として日本の企業の中に根付いていることを物語っているのではないでしょうか。

 自殺した女子社員は昨年4月に入社し、10月以降は1カ月の残業時間が約105時間にもなっていたといいます。「体も心もズタズタ」「もう4時だ。体が震えるよ…しぬ もう無理そう。つかれた」などとツイッターに悲痛な叫びを残していました。同社では1991年にも、当時24歳の男性社員が長時間労働でうつ状態になり、自殺するという出来事が起きています。遺族が裁判を起こし、2000年に最高裁は電通の責任を認めました。この判決は画期的な判決と評価され、以後、過労死問題の憲法のような判例になっているといいます。

 電通は広告業単体では世界一の売り上げを誇る会社で、国内の広告業界の4分の1を売り上げる巨人です。その巨大な会社を支えている電通社員の働きぶりは想像を絶します。体育会でスポーツに打ち込んだ新卒者を進んで採用するように、会社の体質は体育会系。明け方近くまで勤務し、自宅に帰って朝食をとり、着替えてそのまま出社するのも珍しくないといいます。

 それでも、最高裁での2000年の判決を機に、同社では残業時間の削減に取り組んできました。午後10時以降は会社に残ることが禁止されましたが、出退時間が自動的に記録される出入り口のバーを押して、いったん退社したようにした後、バーをまたいで再び入館し仕事を再開する社員もいたとのことです。このほか、午後10時以降、本社周辺の関連ビルに移動し、そこで仕事を続けるケースもあったとのことです。

 ここで問題になる長時間労働ですが、日本の会社では往々にして美徳ともされる風潮がありました。「仕事にすべてをささげるのが美徳」という考え方が主流を占め、定時帰宅や有休取得に罪悪感を感じる風潮がいまだにあります。実際、今回の電通社員自殺を受けて、「100時間ぐらいなんだ。オレはもっと残業していたぞ」「若く経験のない時の100時間を積み重ねて、いずれは成果の出せる時が来る」などの意見がネットに掲載されました。いずれも50歳代の人の書き込みだそうです。

 奇しくも電通社員が自らの命を絶った日に閣議決定された過労死等防止対策白書に対して「残業時間が100時間を超えたぐらいで過労死するのは情けない」などとした武蔵野大学の教授の投稿が「時代錯誤だ」と批判を浴び、その後、投稿を削除し謝罪するといった出来事も起こりました。これらの書き込みを見ても、会社の管理職の立場にあるような年代の人たちに長時間労働を是と考える人が多いことを物語っています。

 この過労死等防止対策白書によりますと、過労死ラインとされる月80時間を超えて残業をした正社員がいる企業が23%に上り、昨年度には過労死の労災認定が96件、過労自殺(未遂を含む)の労災認定が93件あったそうです。もちろん、これは氷山の一角です。警察庁などによりますと、1915年には勤務問題を原因の一つとする自殺が2000件を超えたそうです。なんともおぞましい限りです。

 欧米では長時間労働は必ずしも美徳ではありません。それどころか、決められた時間に仕事を終えることができない労働者は無能と判定されるそうです。と言っても、既定の労働時間内ではとても消化できない量の仕事を与えられれば定時退社などと言ってはいられません。実際、電通では膨大な仕事を翌朝の会議までに終えておかなければ、上司から叱責されるので、いやおうなしに長時間の残業をしなければならなかったそうです。

 電通では今回の女子社員の自殺を機に、午後10時から全館の電気を消灯しているそうですが、仕事の量が変わらなければ、小手先の対策に終わります。根本的な対策は仕事の量に見合った社員を確保するなど会社の機構を変えることです。これはすべての会社に当てはまります。会社に人生のすべてをささげるという風潮や長時間労働は美徳という考え方を払しょくし、合理的な労働形態を実現しなければならない時代になっています。

 

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