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月刊コラム

2011年3月 医療を変える電子カルテ

 コンピュータを利用した電子カルテが医療の世界で注目を集めています。静岡県で県内全域を結ぶ電子カルテ共有システムが構築されるなど、どこの医療機関にかかっても、たちどころにこれまでの病気やけがの治療履歴が分かる時代がやってこようとしています。

 これまでのカルテは、紙の用紙に医師が症状や治療法、薬の処方などを書き込んでいましたが、コンピュータの画面にデータを打ち込んで保存する電子カルテが開発され、近年急速に医療機関に普及しています。

 電子カルテの利点として、まず、コンピュータの端末やパソコンの画面を開けば、すぐさま患者のデータを見ることができるため、保管庫からカルテの書類を探す手間が省け、受付での待ち時間が短縮されます。さらに、各端末が回線で結ばれているため、部署を超えて患者の履歴、体の状態を即座に知ることができます。たとえば、レントゲンの映像や血液検査の結果も、担当部署から電子カルテに送られ、担当医師は結果をすぐに知ることができます。

 わが国の大学病院で最初に電子カルテを導入した千葉大学医学部付属病院では、平成15年に全面的に電子カルテに移行しました。医療保険者への診療費請求もやがてオンライン化することが予定されており、県内の医院や診療所でも電子カルテを導入するところが増えています。

 単独の病院内だけではなく、地域の医療機関が患者の情報を共有しようという試みも始まりました。冒頭紹介した静岡県では、地方独立行政法人静岡県立病院機構と富士通が開発した電子カルテ共有システムが4月から稼動するということです。

 全国で始めて県全域をカバーできるシステムで、静岡県内の中核病院や診療所がITで結ばれます。検査の重複が避けられ患者の負担が減るほか、別の病院の専門医による遠隔診断も可能になります。地震などの災害時に威力を発揮したり、地域の医師不足による医療格差の是正にも役立つと期待されています。

 しかし課題も残っています。個人情報の保全の問題です。治療に関係のない第三者が容易に他人の体のデータを得ることが可能なシステムでは困ります。今でも、定められたIDを持つ者しか、アクセスできないなどの対策が施されていますが、セキュリティを高めればそれだけ暗号化などの防護処理は複雑になり、かえって利便性を損ねることになります。

 こういった問題が統一規格の策定を困難にしている側面もあります。それぞれの病院が独自に電子カルテを開発していては、相互のやりとりに支障が出ますし、静岡県のように統一規格で同時にスタートしないと、紙のカルテと電子カルテを併用しなければならなくなります。一度紙に書いた患者情報を改めて電子カルテに打ちなおしていては、二重の手間がかかり正に本末転倒です。

 これらの問題を一つひとつ摘み取っていくことで、多くのメリットをもたらす電子カルテが生きてくるのです。静岡県の取り組みを参考に、やがては国内全域をカバーする電子カルテのシステム構築が望まれています。

 

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