ゲリラ豪雨という呼び名もすっかり定着した感がありますが、最近のそれは一段と凶暴化している気がします。台風シーズンにはさらに多発することが予想されていますので、普段から天気予報に注意し、浸水や落雷、がけ崩れなどの災害をもたらすゲリラ豪雨からわが身を守る算段が必要です。
ゲリラ豪雨は、一般的に直径10キロメートルから数10キロメートルの範囲内で、1時間に50ミリを超える雨が降る集中豪雨のことを言います。気象学の言葉にはないのですが、ゲリラ的に来襲する局地的な大雨に対して2006年ごろからマスコミなどが盛んに使うようになり、2008年には新語・流行語大賞トップ10に選出されています。
今夏も全国各地でゲリラ豪雨が発生しました。8月3日には千葉市で午前10時20分までの1時間に44.5ミリの激しい雨が降り、中央区や稲毛区などの広い地域が浸水、JR・京成千葉駅のロータリーが水没するなどし、稲毛区の一部4634世帯の1万350人に対して避難勧告が発令されました。また、冠水した道路で車に取り残された男女2人が消防隊員によって救助されました。8月20日にはゲリラ豪雨で玉川花火大会が中止になり、落雷で男女9人がけがを負いました。
ゲリラ豪雨はどのようにして発生するのでしょうか。そのメカニズムは都市のヒートアイランド化に密接な関連があるとされています。アスファルトやコンクリートで囲まれた都市で、エアコンや自動車の熱などで温められた大気が高層ウォールと呼ばれる高いビル群に沿うようにして上昇、上空の冷たい空気に触れて積乱雲が発生し、豪雨をもたらします。
さらに、地球温暖化による海面温度の上昇も相まって近年、ゲリラ豪雨の発生が増加傾向にあります。アメダスの観測によると、1時間に50ミリ以上の豪雨が発生した回数は、約30年前と比べると約1.45倍に増加、さらに1時間に80ミリ以上となると、約2倍も増加しているということです。
気象庁の分類では、1時間に30~50ミリの雨を「激しい雨」としています。山崩れ・崖崩れの危険地帯では避難の準備が必要になり、都市部では下水管から雨水があふれる状態です。50~80ミリは「非常に激しい雨」。土石流が起こりやすくなり、都市部では地下室や地下街に雨水が流れ込むこともあるレベルです。そして、80ミリ以上は「猛烈な雨」。息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感じるほどで、大規模災害が発生する危険性が高いとされています。豪雨に遭遇した際には十分な注意が必要です。
ゲリラ豪雨は大規模な浸水被害のほか、河川氾濫、がけ崩れや土砂崩れを引き起こします。2006年7月に南九州、北陸、長野、山陰地方などで発生したゲリラ豪雨では、がけ崩れや土砂崩れで多くの犠牲者を出し、家屋倒壊など甚大な被害をもたらしました。地面がアスファルトやコンクリートで覆われていて、雨が地中に浸みこまない都市部では特にゲリラ豪雨に弱く、下水の処理能力を超えてあふれ出した雨水が地下街へ流入、地下鉄や道路のマヒなどの都市型災害を発生させます。地下空間への浸水防止対策、調節池の整備、土砂災害防止工事などの自治体の積極的な対応も求められています。
いつ発生するか分からないということで、ゲリラ豪雨と名付けられた大雨ですが、近年ではアメダス観測網の整備、気象衛星ひまわりによる雲の動向把握などで発生をある程度予測できるようになりました。まだまだゲリラ豪雨のシーズンは続きます。天気予報に注意を払い、ゲリラ豪雨が予報されている際には鉄砲水の危険が伴う河川敷でのレクリエーションを中止したり、がけ崩れや土砂崩れの危険がある場所には近寄らないなどの十分な配慮が必要です。