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月刊コラム

2019年7月 なぜ起きる?無差別大量殺傷事件

 数々のアニメーション作品を制作してきた「京都アニメーション」第一スタジオに男が侵入、ガソリンを撒いて放火し、35人が死亡するというショッキングな事件が発生しました。真っ黒な煙の中で命を落とした人々の無念さはいかばかりであったでしょう。謹んでお悔やみを申し上げます。

 「京都アニメーション」の事件のように、大勢の人の命を奪う行為を躊躇なく実行する人間が増えている気がします。今年5月28日には神奈川県川崎市で小学校のスクールバスを待っていた児童や保護者に刃物を持った男が襲い掛かり、2人が死亡し、18人が負傷するという事件がありました。また、2008年6月8日には、歩行者天国に車で突入した男が刃物で通行人を切り付けて7人を殺害、10人に重軽傷を負わせるという事件が東京・秋葉原で発生しました。

 「京都アニメーション」の事件では、犯人は「応募した小説が盗まれた」と叫んでいたそうです。秋葉原無差別殺傷事件では、どっぷりと依存していたネットの掲示板を誰かに荒らされたため、なりすまし行為や荒らし行為をやめてほしいと伝えるために事件を起こした」と述べています。犯人が語る動機はいずれも常人には理解しがたいのですが、識者は「無差別大量殺人事件の犯行の背景には怒りや復讐心があることが多い」と述べています。さらに「社会に対する根強い不満があり、自分の現在の状況が思うように打開できず、膨らむ不満をため込んできた」とも分析しています。世間を震撼させた2001年6月8日の附属池田小無差別殺傷事件では、犯人は高学歴・高収入のエリートに対する屈折した羨望、嫉妬を抱いていました。法務省・法務総合研究所が無差別殺傷事件を引き起こした52人の判決などを分析した結果、動機で最も多いのは自己の境遇への不満でした。

 犯行にあたって、「社会を変えるため」とする身勝手な正義感を抱く犯人も多いようです。2016年7月26日に神奈川県相模原市の障害者施設で19人の入所者を刺殺した犯人は、「障害者が安楽死できる世界を望む」という内容の衆議院議長あての手紙を公邸に持参していました。ISなどによる無差別大量殺人の自爆テロも同様で、イスラム過激派の理想社会を実現するためという彼らなりの「正義」が根底にあると言う識者もいます。

 「社会を変えるためという歪んだ正義感、他者への一方的な怒り、現状の環境や自己への破壊願望が犯行へと駆りたてる」とされる無差別大量殺傷事件ですが、そこに至るまでには犯人の社会的な孤立が大きく影響しているという研究もあります。その最もいい例が川崎市での事件です。犯人は犯行後、すぐに自殺したため詳しい動機は知る由もありませんが、他者との接点がない長い間の引きこもりで、暗くおぞましい感情を増幅させていったのでしょう。

 孤独は人間の性格を変えるというハーバード大学などの研究があります。孤独は人の恐怖心をかき立て、自己中心的、攻撃的にするというのです。法務省・法務総合研究所の報告書は、「社会的孤立を防ぐための居場所を作る施策は、事件の防止にも資する」と述べています。人はいったん孤独になると、再び人とつながることを極端に恐れると言います。大勢の人々が犠牲になる惨劇を防ぐためにも、「孤立に苦しむ人が帰属意識を持てるさまざまな場を用意し、一人でも多くをいざなう努力」(法務省・法務総合研究所)が求められています。「心の健常化」は社会全体で取り組むべき課題なのです。

 

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