年も押し迫りました。この時期は毎年、その年を振り返ってどんな一年だったかに思いを巡らすのですが、今年は新型コロナウイルスの話題一色で、明るい話題が少なかった年でした。この一年を黒く塗り込めた新型コロナウイルス流行の足取りをたどってみます。
中国・武漢市で流行していた原因不明の肺炎による患者が国内で発見されたのは年明け間もなくの1月16日でした。神奈川県の保健所に武漢市に滞在歴がある肺炎患者が報告され、国立感染症研究所の検査で新型コロナウイルスの感染が確認されました。1月29日には日本政府のチャーター便で武漢市などに滞在していた日本人が帰国、勝浦市の「ホテル三日月」が感染の有無を確認するための隔離生活を送る帰国者を受け入れました。
同月末には国内での感染が初めて確認されました。武漢市からのツアー客を乗せていたバス運転手でした。ツアー客は途中、奈良公園に立ち寄ったと報道され、その後、同公園に立ち寄る人がほとんどいなくなるなど、奈良観光は大きな打撃を受けました。
ベトナムや台湾などに寄港して2月3日に横浜港に帰港したダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルス集団感染もショッキングな出来事でした。乗客は2週間の間、上陸を許されず、陽性者が救急車で次々と医療機関に運ばれるシーンがテレビで放映されました。同船の乗客、乗組員のうち感染者は712人に上り、うち13人が亡くなりました。屋形船での新年会に参加していたタクシー運転手の感染が確認され、その後、ライブハウスやフィットネスクラブなどでクラスターが発生しました。
国内での市中感染が見られるようになってから、政府や地方自治体は次々と対策を打ち出しました。緊急事態宣言をした北海道が道内の小学校を臨時休校にしたのを皮切りに、政府は全国的なスポーツ、文化イベントの中止、延期、規模縮小を要請、全国すべての小中高校などを3月2日から春休みまで臨時休校するよう求めました。
3月には世界中で新型コロナウイルスが流行している情勢を鑑み、世界保健機構(WHO)がパンデミックを宣言、7月開催が予定されていた2020年東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が決定しました。センバツ高校野球大会の中止に続いて主だったスポーツ大会が軒並み取り止められ、プロ野球開幕も大きくずれ込むなど、スポーツ界にとっても暗い1年でした。
4月には、安倍首相が千葉県など7都府県を対象に「緊急事態宣言」を発令、その後、対象を全国に拡大しました。「新しい生活様式」が呼びかけられ、こぞって外出を控えるなどのつらい自粛生活を送りました。
県も医療体制の確保など新型コロナウイルス対策を矢継ぎ早に打ち出しました。6月定例県議会では総額1867億4800万円に及ぶ過去最大の補正予算を成立させ、感染症患者受け入れのための空床確保、中小企業への支援などを拡充させました。
さまざまな対策にもかかわらず、新型コロナウイルスは2波、3波と襲来し、衰える気配を見せないばかりか、全国各地で過去最多の感染者が発生しています。県内でも今月22日にはこれまで最も多い152人の感染が確認されました。状況は厳しさを増すばかりです。
先行きに光が見える知らせもあります。米国とドイツが共同で開発したワクチンの接種が始まりました。我が国は海外の製薬会社からの2億9000万回分のワクチン提供を確保しています。全国民が2回接種してもまだ余る量です。来年の接種スケジュール案も発表されました。まず、医療関係者への接種から始まり、3月には高齢者など一般への接種が開始されます。
ワクチンなどで人々の60~70%が免疫を持てば、流行は自然と鎮静するとされています。人類の英知が新型コロナウイルスなどに負けるわけはありません。後しばらくの辛抱です。引き続いて3密を避けるなどの感染防止に努めましょう