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月刊コラム

2013年3月 サイバー戦争に備えを

 サイバー戦争が米中間で白熱化しています。サイバー戦争とは、インターネットやコンピューター上で行われる戦争行為のことで、厳重なセキュリティを破って相手のコンピューターに侵入し、保存されているデータを盗んだり、あるいはコンピューターシステムを破壊したりします。昔はSF小説でしか聞かれない言葉でしたが、今では専門の特殊部隊が軍隊に置かれ、相手国のコンピューターシステムを攻撃し合っているのです。

 米国は2005年にサイバー戦争用の部隊である「ネットワーク戦担当統合機能部隊」を設立しました。一方、中国国防部報道官は広東省広州軍区に「ネット藍軍」と名づけられた電子戦用部隊の訓練などを行う組織が存在することを認めました。中国当局者はこの組織をあくまで米国からのサイバー攻撃を防御するために設立されたものと主張していますが、実際はサイバー部隊員250人とハッカー5万人からなる部隊だとの報告もあります。また、最近の米企業・政府などに対するサイバー攻撃発信源の大半が上海郊外のオフィスビルで、同ビルには中国人民解放軍総参謀部の61398部隊が置かれていると米有力紙が報じました。この部隊は英語によるハッキング専門の部隊と分析されています。

 世界中のすべての組織がコンピューターを介在して動くようになった今、サイバー攻撃は恐るべき威力を発揮します。例えば、電力会社のコンピューターに進入し、電力供給システムを破壊すれば、広範囲な停電を引き起こし、大きな経済損失を与えることができます。金融や軍事関連のコンピューターは外部とつながっていないイントラネットで運営されていますが、それすら完全に安心というわけにはいきません。原発のコンピューターシステムが破壊されれば、被害は目を覆うものになるでしょう。

 最近ではイランの核施設を標的にしたサイバー攻撃が明らかになりました。米国とイスラエルが共同開発したコンピューターウイルスをイランのウラン濃縮施設のコンピューターに送り込み、遠心分離機を誤作動させてイランの核開発に大きなダメージを与えたということです。機器を高速回転させて破壊するとともに、正常な作動を示す偽のデータを送り、異常発生を感知させない高度なウイルスだったといわれています。

 このような目に見えない戦争であるサイバー戦争が米中間で火花を散らしているのです。サイバー戦争の成果について、もちろん両国は口を閉ざしていますが、被害を互いに喧伝し合っています。

 米国では2012年だけで電力、パイプライン、水道などのインフラへのサイバー攻撃が200件近くもあったとしています。また、米国のセキュリティ関連会社は、中国軍部との関係が推測されるハッカーグループが2006年から7年間にわたって、ITや宇宙産業、エネルギー産業などの米国企業115社など141社からデータを盗んだと発表しています。一方、中国は2012年9月から2013年2月までの間に国内の政府機関や企業に対する外国からのサイバー攻撃被害が85件にのぼり、うち39件の発信元は米国のアドレスだったと主張しています。

 米中だけでなく、ロシアやイスラエルなどの国々もサイバー戦争の能力を急ピッチで蓄えています。わが国も安閑としてはいられません。独立行政法人「情報通信研究機構(NICT)の発表では、平成24年に日本の政府機関や企業などを対象にした国内外からのサイバー攻撃関連の通信が約78億件もあったと発表しています。これまでに、中央省庁のホームページが改ざんされたり、衆院のサーバーに進入された痕跡が見つかったりしています。防衛産業関連の企業を標的にしたサイバー攻撃も頻発しています。

 これらのサイバー攻撃に対して、わが国では「内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)」が政府関係の防御に努め、さらに軍事関係のセキュリティ防御は自衛隊のシステム防護隊があたっていますが、やはり、出遅れの感は否めません。オバマ大統領は今年2月の一般教書演説の中で、サイバーセキュリティ強化に関する大統領令を発表し、これを受けて連邦政府はサイバー戦争防御網の再構築に乗り出しています。わが国でも官民一体となった強力なセキュリティ組織の編成が望まれています。

 

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