東京オリンピックで活躍が期待されていた競泳の池江璃花子選手が白血病を患っていることを自ら公表したニュースは、私たちに大きな衝撃を与えました。じっくりと治療に専念し快癒することを祈るとともに、このショッキングなニュースを機に、スポーツ選手に定期的な血液検査を推奨したいと思います。
なぜなら、強度のトレーニングを継続して行っているスポーツ選手は、貧血に陥りやすいからです。男子の貧血の割合は小学校高学年で2・3%、中学生で4・4%という調査結果がありますが、サッカー選手を育成しているJFAアカデミーの選手はその54・4%が貧血を引き起こす鉄分の欠乏状態だったということです。
若いスポーツ選手は体の発達のために鉄分が必要で、加えて運動による発汗やエネルギー消費で鉄分が失われ、その結果、造血に必要な鉄分が不足します。特に女性アスリートは生理での出血もあり、貧血に陥りやすいと言われています。また、空手や剣道、バスケットボールなど、繰り返し地面や床に足を踏み込んだり、すったりする競技の選手は、足底の血管内の赤血球が破壊され、貧血の原因になるといいます。
「スポーツ貧血」と名付けられ、医療関係者には知られていることなのですが、「最近、練習がきつく、だるい」などと感じるだけで、これといった自覚症状がないまま進行することが多いそうです。パフォーマンスの低下に焦ってそれまで以上にハードな練習をし、そのせいで体を壊すということも起こりかねません。めまいやふらつきなどの症状を自覚した時は、かなり貧血が進んだ状態ということです。
池江選手も今年に入ってからのレースでかなりタイムが悪かったり、疲れが抜けないと感じていたりしていたそうです。病気だとは気付かず、その後のオーストラリアでの合宿中に体調が悪そうなのをコーチが気づき、検査の結果、白血病と判明したという経過はご存知の通りです。タイムが上がらず、練習でも肩で息をしたりした原因は白血病の貧血症状によるものだったとされています。
白血病は一日でも早い発見が治療の成績につながる病気だということです。日本水泳連盟は、春と冬に行っている代表選手などを対象とした合宿に合わせてメディカルチェックをしてきたようですが、もしも定期的な血液検査が行われていれば、池江選手の病気発見がもう少し早まったかもしれません。
池江選手が白血病と診断されたことを受け、日本水泳連盟は代表選手などに対し、血液検査を含むメディカルチェックの徹底を検討しているそうです。水泳だけではなく、ほかの競技団体もメディカルチェックを定期的に行って、選手の科学的な体の管理をすべきです。
スポーツ医学に詳しい評論家は、スポーツ選手のみならず趣味でスポーツをしている人も、年に3~4回は血液検査を受けて、自分のヘモグロビン、鉄などの値を知っておくことを勧めています。採血しなくともヘモグロビンの値を測定できる機器もあります。スポーツマンにとって常に自分の血液の状態を知ることは、競技パフォーマンスを上げるためにも大切なことなのです。