千葉県議会議員 林もとひと オフィシャルサイト

月刊コラム

2011年2月 TPPについて考える

 自由貿易の枠組みであるTPPに日本が加盟すべきか否か、国論が真っ二つに割れています。行くべきか、行かぬべきか、その結論はわが国の将来に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

 ご存知の方も多いと思いますが、TPPとは環太平洋戦略的経済連携協定(Trans Pacific Partnership)の略称で、太平洋を囲む国々が手を取り合い、自由貿易圏をつくろうという構想です。2006年5月にチリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイの4カ国で発効したのが始まりで、その後、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、そしてマレーシアの5カ国が「参加したい」と手を挙げました。

 わが国では昨年10月に開催された「新成長戦略実現会議」で、菅首相がTPPへの参加検討を表明しました。TPPの大原則は金融サービスを含めて、加盟国間での取引における関税の撤廃です。関税が撤廃されれば、加盟国間の物や金の流れは活発になり、人々は外国のものが安く手に入ることになります。経済産業省は、TPPに参加しないと2020年時点でGDPが10兆5000億円減少するとの試算を発表しています。

 一方でわが国にとって頭の痛い問題もあります。TPPに加盟すれば、安い農産物がどっと国内に入ってきます。わが国では国土が狭いために、集約農業が行われてきました。資金も手間もかかります。広い農地で大規模に栽培されるアメリカやオーストラリアの農産物に、価格の面でとても太刀打ちできません。これまで高い関税に守られてきた国内の農家にとって、TPPはまさに黒船襲来のショックなのです。農業をやめてしまう農家も多いでしょうし、日本の食料自給率低下も免れないでしょう。

 農林水産省はTPPに日本が参加すると、国内の農業生産額が4兆円に半減し、実質GDPは8兆円減少、雇用は340万人減ると、経済産業省とは異なったデータを発表しています。そのため農林水産関係の団体は、日本の農業や水産業が壊滅すると危惧しており、各方面にTPP加盟反対を陳情しています。
かといって、簡単に上げた手を下ろすことはできません。世界の貿易の流れは自由貿易です。今後、一層の拡大が予想されるTPPへの参加を見送れば、日本は世界貿易の孤児になり、日本に代わって韓国の貿易が一挙に伸張するだろうと予想されています。生産拠点が海外へシフトする産業の空洞化も避けられません。

 TPP参加を、日本農業の体質が近代化するチャンスと捉える向きもあります。海外へ販売できる作物への栽培変換、米の海外販売ルートの開拓などが考えられています。しかしながら、連綿と続いてきた日本農業の構造変換を一挙にしようというのはかなり無理があります。

 食料の7割以上を輸入に頼っている我が国にとって、食料自給率の更なる低下は国家の存亡にも関わります。何らかの問題で輸入がストップすれば、国民総飢餓状態に陥る可能性があるからです。先般の尖閣問題で中国がレアアースをたてに強硬姿勢に出たことは記憶に新しいところです。

 もとより国土も狭く、資源も乏しい日本は貿易抜きには成立しにくい国家かもしれませんが、こと「食料」に関しては輸入に頼らない構造を確立しておく必要があります。現在約69億人の世界人口も2050年には95億人を突破するとの見方もあり、地球規模で食料不足に陥る可能性もあります。その時には「お金を出せば食える」時代は終わり、完全自給自足が原則になるかもしれません。

 世界貿易の流れから取り残されないためにTPP参加を真剣に検討するならば、平行して、大打撃を受ける農業の保護・強化を十分に考える必要があります。千葉県は生産額全国第3位の農業県でもあります。本県産業にかかわる重大な案件として、県議会内でも議論を深めていきたいと思っています。

 

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