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月刊コラム

2011年8月 「たらい回し」の撲滅を!

 胸の痛みを訴えて救急車を要請した88歳の男性が、6つの病院から受け入れを拒否され、救急車の中で心肺停止になって死亡するという痛ましい出来事が千葉市で起こりました。

 いわゆる病院の「たらい回し」です。新聞報道によりますと、7月20日未明、千葉市の男性から「心臓発作で胸が痛い」と119番通報があり、出動した千葉市消防局の救急車が同市内や四街道市の6つの病院に受け入れを打診しましたが、「ベッドが満床」「患者対応中」などの理由で、いずれからも受け入れを断られ、患者は受け入れ先の病院が見つからないまま車内で心肺停止状態になったそうです。

 この文明が進んだ時代に、医師の手当てを受けることができずに亡くなった人の無念さはいくばかりであったでしょう。救急車が患者受け入れ先の病院探しに難渋するというこのようなケースは昔からあり、そのたびに社会問題になりますが、一向になくなりません。なぜなのでしょうか。

 やはり最大の問題は医師および看護師不足でしょう。医師不足で病院の勤務医が忙しいのは事実です。医師を相手取った医療訴訟の増加もあって、特に産婦人科などの科目で深刻な医師不足を招いています。かつて、医師は病人を励ますために「大丈夫です」と患者に声をかけましたが、今では決してそのようなことは口にしません。思うような治療効果が上がらなかったときに、「大丈夫と言ったではないか」と訴訟を起こされるからです。莫大な賠償責任が生じた場合に備えて、医療訴訟に備えた保険があり、それに入っておくのは医師の常識になっています。

 そして「不運なタイミングであった」ということも一因と言えるでしょう。深夜、早朝には勤務している医師の数は極端に減っています。たまたま、収容を打診された病院では当直の医師が他の患者の診療に忙殺されていたり、ベッドの空きがなかったりしたのでしょう。どの医師も「人命を救う」という確固とした職業倫理を心に抱いています。医師だけを責めるわけにはいきませんし、それだけでは「たらい回し」撲滅に向かってなにも動き出しません。

 もちろん、医師不足やタイミングのせいだけにして、事を済ませるわけにはいきません。このようなことが起きないような救急医療体制の構築を考えていかなければなりません。東京都は2009年から救急搬送の新体制を実施しています。東京ルールと呼ばれるこの体制は都内の24病院を「地域救急センター」に指定し、このセンターを中心に病院間で連絡をとりあって受け入れ先を探すシステムです。「地域の病院が責任を持って救急医療を支えてほしい」と考案されたシステムです。

 千葉県でも救急搬送を円滑に行えるよう、適切な医療の提供が行われるために分類された医療機関のリスト、救急隊による観察基準、搬送先が決まらない場合に受け入れ医療機関を確保するためのルールなどを定めました。それにもかかわらず、今回の痛ましい出来事が起きてしまいました。救急患者の速やかな搬送先確保は、救急医療の原点です。県民が安心して毎日を暮らしていけるよう、効果的な緊急患者搬送システムを構築するべく努力を続けなければなりません。

 

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