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月刊コラム

2022年9月 あってはならないバス置き去り事故

 幼稚園、保育園で通園バスに園児が置き去りにされ死亡するという事案がたびたび発生しています。幼稚園、保育園は大事な児童を親御さんから預かっているという意識を持って運営に当たっているはずです。痛ましい事故を未然に防ぐことはできなかったのでしょうか。

 9月5日、静岡県牧之原市の幼稚園で、送迎バスに乗っていた3歳の児童が炎天下のバスの中に置き去りにされ、5時間後に発見されましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。送迎バスには運転手を務めていた園長を含め、2人の保育者が乗っていましたが、互いに「相手が確認するだろう」と思い、バス内の確認をおろそかにしました。園児の担任は、取り残された園児がいないことに気づきながら、園児の行方を捜さなかったということです。

 園児の送迎バス置き去り事故はこれまでもしばしば発生していました。昨年の7月29日には、福岡県中間市の保育園で5歳の園児が登園の送迎バスに9時間も取り残され、死亡しました。2007年7月7日には、福岡県北九州市の保育園で、当時2歳の園児が送迎バスに取り残され、熱中症で死亡しました。

 静岡県での事故を受けて、政府は関係府省会議を開き、小倉少子化担当大臣は全国の保育所、幼稚園などの送迎バスに児童の置き去りを防ぐための安全装置の設置を義務付けるよう関係府省に指示しました。加えて、送迎バス運行の安全管理マニュアルを設置することも指示しました。

 幼稚園、保育園で園児の置き去りが多発していたのに、もっと早く政府の対策が打ち出せなかったのか、少々、疑問が残ります。送迎バスへの園児・児童置き去りについては、外国では発生する可能性が高いとして、とっくに対策が施されていて、スクールバス王国のアメリカでは運転手がバスのキーを抜くとアラームが鳴り、バス後部のボタンを押さない限り鳴り続ける仕組みになっています。運転手はバス後部まで歩いていく間に取り残された児童がいないか車内を隅々まで見て、バス前部まで戻る間に、再び、バス内部に注意を払います。取り残された児童のわずかな動きも感知して、担当者に知らせる装置も開発されています。

 アメリカのスクールバスの予防装置も、実は度重なる置き去り事故を踏まえてのものでした。アメリカの非営利団体の調査では、この30年間余りでおよそ千人の児童生徒が車内に閉じ込められて死亡しています。韓国ではバスに閉じ込められ死亡する事件が相次いだところから2018年に法律を改正し、車内のアラーム設置を義務付けました。この装置を使っての確認をおろそかにした運転手には反則金が科せられます。

 諸外国でさまざまな対策が進んでいるのに、なぜ、日本ではこれまで行われなかったのでしょうか。先んじて対策が進められていれば、幼い命が救えたのにと思うと残念です。このような事故が起きるたびに、関係者は再発防止策を考えると言いますが、当事者に再びはないのです。一度でもあってはならないのです。

 

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